研究実績

データの利用予定

データの利用状況に関しては、研究参加施設にのみ公開しています。

研究成果

COVIREGI-JPで蓄積されたレジストリデータを活用して行われた研究等をご紹介します。

○ 論文

多施設データベースに基づくCOVID-19罹患の気管支喘息患者に関する観察研究 New

COVID-19を合併した喘息患者の臨床的特性と重症度、ワクチン接種との関連に関しては不明な点が多い。本研究では喘息とCOVID-19の重症度の関連性を調べるため、2020年1月から2022年12月の間に690施設に入院した患者のデータを収集し、ロジスティック回帰を用いて多変量解析を実施した。結果として、COVID-19の入院患者72,582人中、3731人に喘息の罹患があった。2020年1月から2021年6月までとワクチン接種が普及し始めた2021年7月から2022年12月までのいずれの期間も、喘息は死亡や侵襲的機械換気のイベント増加と関連はなかった。喘息患者では、前半期間で高齢、BMI上昇、男性、慢性腎臓疾患が、後半期間ではワクチン未接種と高血圧が機械換気のイベント増加と関連があった。

Tsukada A, Terada-Hirashima J, Takasaki J, Nokihara H, Izumi S, Hojo M, Sugiyama H.
Clinical trends among patients with asthma hospitalized for COVID-19 based on data from a nationwide database: an observational study.
BMC Pulm Med.
https://doi.org/10.1186/s12890-024-02917-x

日本のデルタ株およびオミクロン株流行期のCOVID-19入院患者に対する、mRNAワクチンの重症化予防効果の検討

日本のCOVID-19入院患者レジストリであるCOVIREGI-JPのデータを用いて傾向スコアマッチングによる後ろ向きコホート研究を行い、ワクチン接種回数に応じた酸素投与率や死亡率を比較した。デルタ株流行期に入院したワクチン2回接種済の患者は、0-1回接種の患者と比べて酸素投与率が低かったが、死亡率には差がなかった。オミクロン株流行期に入院したワクチン2回接種済の患者は、0-1回接種の患者と比べて酸素投与率、死亡率がどちらも低かった。3回接種済の患者は2回接種の患者と比べて酸素投与率、死亡率のどちらも差がなかった。その時点で流行している変異株の特徴と、ワクチンの効果を考慮してワクチン接種の方針を検討する必要がある。

Suzuki T, Asai Y, Tsuzuki S, Nomoto H, Matsunaga N, Kodama EN, Hayakawa K, Ohmagari N.
Real-world effectiveness of full and booster mRNA vaccination for coronavirus disease 2019 against disease severity during the delta- and omicron-dominant phases: A propensity score-matched cohort study using the nationwide registry data in Japan.
J Microbiol Immunol Infect.
https://doi.org/10.1016/j.jmii.2023.12.002

レジストリデータを外部対照とした重症COVID-19関連肺炎患者に対するトシリズマブと標準治療の有効性の比較

重症COVID-19関連肺炎患者に対するトシリズマブの有効性を目的として、単群治験データにCOVIREGIのレジストリーデータを外部対照としてマッチングし評価した。退院までの期間や退院待ちの状態にプラスの効果を示さなかった。さらに、臨床状態の改善までの時間、臨床的失敗までの時間、回復までの時間などの他の臨床転帰においても、群間で統計学的に有意な差は認められなかった。

Uemura Y, Ozaki R, Shinozaki T, Ohtsu H, Shimizu Y, Izumi K, Saito S, Matsunaga N, Ohmagari N.
Comparative effectiveness of tocilizumab vs standard care in patients with severe COVID-19-related pneumonia: a retrospective cohort study utilizing registry data as a synthetic control.
BMC Infect Dis.
https://doi.org/10.1186/s12879-023-08840-6

COVID19患者に対するステロイド開始時期と転帰:多施設共同後方視的観察研究

COVID-19発症からステロイド投与までの期間と死亡率との関連を明らかにし、背景となる因子を検討するために研究を行った。日本のレジストリに登録された患者を対象とした多施設共同後方視的観察研究である。対象は3692例であった。ステロイド早期投与群は、晩期投与群より重症化の危険因子が多く、死亡率が有意に高かった(13.3%対7.9%、P<0.001)。両群で挿管率や挿管期間、入院期間、挿管から死亡までの期間に有意差はなかった。COVID-19患者への早期ステロイド投与は死亡率上昇と関連しており、早期に重症化し死亡率の高いサブセットの存在または早期ステロイド投与の副作用が示唆された。

Sugimoto R, Kenzaka T, Mikami A, Matsunaga N, Akiyama T, Ohmagari N, Nishisaki H.
Steroid initiation timing and outcome of coronavirus disease 2019 patients: A multicenter, retrospective, observational study.
Int J Immunopathol Pharmacol.
https://doi.org/10.1177/03946320231216314

COVID-19入院患者の治療における大都市圏と非首都圏の相違についての比較研究

COVID-19治療の地域差を見るため、本研究では47都道府県を大都市圏と非首都圏の2つの地域に分けた。さらに重症度が中等症Ⅱ以上の症例に焦点をあて、傾向スコアマッチングで症例背景を揃え、各流行期における治療と転帰を比較した。結果、大都市圏では非首都圏に比べ、第2波と第3波ではNon-IMVが、第4波ではIMVが有意に多く使用されていた。第2波では大都市圏で死亡者数が多かったが、第3波と第4波では同程度であった。一部の項目で傾向に差は見られたが、全体を通して死亡率や提供された治療に明確な差は見られなかった。首都圏で重傷者が多いとの報告もあったが、実際は、大都市圏と非首都圏で大きな差は見られなかった。

Asai Y, Ohashi T, Imai K, Murata K, Tsuzuki S, Matsunaga N, Ohmagari N.
Differences in COVID-19 treatment across Japan: Analysis of the COVID-19 Registry Japan (COVIREGI-JP).
J Infect Chemother.
https://doi.org/10.1016/j.jiac.2023.09.005

小児COVID-19におけるレムデシビルの臨床的有用性

COVID-19の小児におけるレムデシビルの臨床的有効性は不明である。COVID-19の小児を対象としたこの傾向スコアマッチのレトロスペクティブコホート研究では、4日目に解熱を達成した患者の割合はレムデシビル群のほうが非レムデシビル群よりも高かったが、統計学的な差はなかった(86.7%対73.3%、P=0.333)。

Shoji K, Asai Y, Akiyama T, Tsuzuki S, Matsunaga N, Suzuki S, Iwamoto N, Funaki T, Miyairi I, Ohmagari N.
Clinical efficacy of remdesivir for COVID-19 in children: A propensity-score-matched analysis.
J Infect Chemother.
https://doi.org/10.1016/j.jiac.2023.06.006

コロナ肺炎を同定するための比較的徐脈の臨床的有用性 後ろ向きコホート研究

コロナ肺炎とその他の市中肺炎を区別するために比較的徐脈が有用かどうか検討した。比較的徐脈はコロナ肺炎を同定するために有用な身体所見とは言えなかったが、肺炎全体において低酸素を予測する可能性がある。

Takao Wakabayashi, Hiroyoshi Iwata.
The Clinical Utility of Relative Bradycardia for Identifying Cases of Coronavirus Disease 2019 Pneumonia: A Retrospective Pneumonia Cohort Study.
Internal Medicine.
https://doi.org/10.2169/internalmedicine.1469-22

80歳以上の高齢COVID-19患者に対するモルヌピラビルの安全性と認容性に関する検討

80歳を超える超高齢COVID-19患者に対するモルヌピラビルの認容性・安全性に関する報告は少ない。
本研究では80歳以上・未満で (A)内服中止率、(B)有害事象、(C)診断から30日以内の全死亡、を比較した。対象者は102名で47名(46.1%)は80歳以上(高齢者)、55名(53.9%)は80歳未満(若年者)であった。高齢者は、中等症(中等度1および2)の割合が有意に高かった。モルヌピラビルの服用を中止した患者は、高齢者では8.5%、若年者では1.8%で有意差はなかった。有害事象は39/102例(38.2%)に認め、主なものは下痢(9.8%)、併存疾患の増悪(6.9%)、骨髄抑制(6.9%)、肝機能障害(5.9%)、食欲不振(4.9%)で、発現率に差はなかった。全死亡率は10.8%であり、両群に差はなくモルヌピラビルに関連する死亡も認めなかった。
80歳以上の超高齢COVID-19患者においても、モルヌピラビルの認容性・安全性は若年患者と同等であった。

Kohei Fujita, Osamu Kanai, Hiroaki Hata, Kenjiro Ishigami, Kazutaka Nanba, Naoki Esaka, Koichi Seta, Tadashi Mio, Takao Odagaki.
Comparison of the acceptability and safety of molnupiravir in COVID-19 patients aged over and under 80 years.
Aging Health Res.
https://doi.org/10.1016/j.ahr.2023.100130

入院1週後の血清LDH値はCOVID-19患者の院内死亡における最も強い予測因子である

本邦のCOVID-19の入院患者の臨床経過は多様であり、入院時の検査値のみでは正確な予後予測は困難な可能性がある。本研究では、COVID-19 Registry Japanに登録された患者のうち、入院日(1日目)と8日目に基本情報、転帰、検査値に関する記録がある患者(8860名)を対象とし、院内死亡への影響を検討した。8日目にLDH値が222 IU/Lを超えた群は、LDH値≦222 IU/Lの群と比較して、死亡率が高かった。年齢、性別、BMI、基礎疾患、1日目と8日目の検査値の中からstepwise methodで変数選択しロジスティック分析を行ったところ、8日目のLDHが死亡率と最も強く関連していた。8日目のLDH値単独の院内死亡のROC曲線のAUCは0.88であった。8日目のLDH値は、入院COVID-19患者の院内死亡の最も強い予測因子であり、重症COVID-19患者の初期治療後の方針決定において有用である可能性が示された。

Nakakubo S, Unoki Y, Kitajima K, Terada M, Gatanaga H, Ohmagari N, Yokota I, Konno S.
Serum Lactate Dehydrogenase Level One Week after Admission Is the Strongest Predictor of Prognosis of COVID-19: A Large Observational Study Using the COVID-19 Registry Japan.
Viruses.
https://doi.org/10.3390/v15030671

迅速診断検査により他の呼吸器病原体が同定されたCOVID-19入院患者の特徴

2021年6月30日までに入院したCOVID-19患者42,309名を対象に、RDT(迅速診断検査)により他の病原体が同定された患者の特徴について観察研究を実施した。RDTは高齢者や重症患者で多く実施され、実施率は肺炎球菌(尿中抗原検査)が13.1%と最も高かった。経時的に実施率は減少傾向を示したが、RDT提出有無、陽性・陰性患者では異なる臨床疫学的特徴を有しており、他の病原体との共感染の評価が必要なCOVID-19患者においてRDTは依然として重要な診断手段であると考えられた。陽性率の解釈についてはRDT検査は医師の判断において検査が提出されていることから慎重な検討が必要である。

Suzuki M, Hayakawa K, Asai Y, Terada M, Kitajima K, Tsuzuki S, Moriya A, Moriya K, Uchiyama-Nakamura F, Ohmagari N.
Characteristics of hospitalized COVID-19 patients with other respiratory pathogens identified by rapid diagnostic test.
J Infect Chemother.
https://doi.org/10.1016/j.jiac.2023.02.006

COVID-19患者における未診断糖尿病の合併、急性-慢性血糖値比の予後への影響

COVID-19入院患者において、入院時にこれまで未診断だった糖尿病の合併と重症化の関連は知られるが、その理由や大規模データでの実態は不明である。日本のCOVID-19入院患者のレジストリ(COVIREGI-JP)を用い、2021年7月から2022年1月の期間、4,747名を対象に解析した。未診断の糖尿病を合併した群では、糖尿病の合併がない群と比較して、COVID-19の臨床転帰の悪化と関連し(オッズ比2.18,95%信頼区間1.50-3.18)、特に急性-慢性血糖値比が高値の群で、低値の群と比べて転帰が悪化した(オッズ比3.33、95%信頼区間1.43-7.77)。以上より、未診断の糖尿病を合併したCOVID-19患者において、血糖値の急性期における上昇の大きさが臨床転帰の悪化と関連する事が示唆された。

Uchihara M, Sugiyama T, Bouchi R, Matsunaga N, Asai Y, Gatanaga H, Ohsugi M, Ohmagari N, Kajio H, Ueki K.
Association of acute-to-chronic glycemic ratio and outcomes in patients with COVID-19 and undiagnosed diabetes mellitus: A retrospective nationwide cohort study.
J Diabetes Investig.
https://doi.org/10.1111/jdi.13979

COVID-19治療におけるステロイドとファビピラビルの地域別使用傾向について

本研究では、COVID-19治療薬として使われてきたステロイドとファビピラビルに焦点をあて、地域ごとの投与割合の時間的変化を分析した。ステロイドはその有効性が確認されて以降、全国的に投与割合が増加し、どこでも有効な治療が受けられる状態であったことが確認できた。ファビピラビルの投与割合は減少傾向を見せ、第4波では東京を含む多くの地域で10%以下であった。一方、一部地域では50%以上の重症患者に処方されるなど、治療方針に関して地域差があったことが示唆された。レジストリ研究は大規模な集団を対象としており、投薬状況や傾向をリアルタイムで把握できる。治療の標準化を目的としたレジストリの活用が期待される。

Asai Y, Tsuzuki S, Matsunaga N, Ohmagari N.
Regional trends in the use of steroids and favipiravir for COVID-19 treatment.
J Infect Public Health.
https://doi.org/10.1016/j.jiph.2022.12.014

1次、2次、3次医療機関で治療を受けたCOVID-19患者の臨床的特徴と転帰の比較

COVID-19患者の医学的特徴や臨床経過を搬送先の医療機関のレベルに分けて比較した。COVIREGI-JPに登録された、585施設の合計59,707人の患者を分析した結果、重症化リスクが高く、搬送時の状態が悪い患者は、適切に高度医療施設に搬送されていたが、予想通り、入院後の経過は悪く、死亡率も高かった。一方、合併症ごとの死亡率を分析すると、一部の手技を要する合併症(胸水、心筋虚血、不整脈など)が生じた場合は特異的に高度医療機関での生存率が高く、COVID-19の重症度だけでなく合併症に注目する重要性が示唆された。また、全体的に、死亡例や重症例は海外の報告と比べて少なかった。

Tomidokoro D, Asai Y, Hayakawa K, Kutsuna S, Terada M, Sugiura W, Ohmagari N, Hiroi Y.
Comparison of the clinical characteristics and outcomes of Japanese patients with COVID-19 treated in primary, secondary, and tertiary care facilities.
J Infect Chemother.
https://doi.org/10.1016/j.jiac.2022.12.003

鼻・咽頭症状によるCOVID-19肺炎の発症の有無に関する検討

当研究は札幌北辰病院にてCOVID-19にて入院された患者群において、鼻汁・咽頭症状の有無が肺炎発症の有無に影響を与えるかテーマに解析を行なった。解析の結果、通常の市中肺炎と異なり、COVID-19に罹患された患者群では、鼻汁・咽頭症状の有無で肺炎の有無を示唆する結果は得られなかった。

Iwata H, Wakabayashi T, Inazawa N.
The Clinical Significance of Otolaryngology Manifestations in COVID-19 Pneumonia: A Single-center Retrospective Cohort Study.
Intern Med.
https://doi.org/10.2169/internalmedicine.0282-22

日本におけるCOVID-19患者の4Cスコアによる重症化リスク別・年齢層別・流行期別の死亡率の検討

2020年3月〜2022年2月にCOVID-19レジストリに登録された、計56,986例のCOVID-19入院患者データを用いて、日本におけるCOVID-19入院患者の死亡率を、4Cスコアによる重症化リスク別・年齢層別・流行期別に算出し、英国における流行初期のCOVID-19入院患者の死亡率と比較した。全体として、日本のCOVID-19入院患者の死亡率は英国における死亡率と比較し優位に低かったが、90歳以上で重症化リスクの最も高い患者の死亡率は、英国における死亡率と同程度であった。流行第4波・第5波における75歳以上で重症化リスクの最も高い患者の死亡率も、英国の死亡率と同程度であったが、流行第6波においては全ての年齢層・重症化リスクにおける死亡率が、英国の死亡率と比較し有意に低かった。流行第6波においては、日本のCOVID-19入院患者の死亡率は、75歳以上の高齢者で重症化リスクの高い患者においても、非常に低い水準にある。

Hiroaki Baba, Saori Ikumi, Shotaro Aoyama, Tetsuo Ishikawa, Yusuke Asai, Nobuaki Matsunaga, Norio Ohmagari, Hajime Kanamori, Koichi Tokuda, Takuya Ueda, Eiryo Kawakami.
Statistical analysis of mortality rates of COVID-19 patients in Japan across the 4C mortality score risk groups, age groups, and epidemiological waves: A report from the nationwide COVID-19 cohort.
Open Forum Infect Dis.
https://doi.org/10.1093/ofid/ofac638

新型コロナウイルス感染症による日本の人種的・民族的マイノリティへの影響に関する臨床疫学的解析

COVID-19入院患者の多施設レジストリを用いて日本の人種的・民族的マイノリティの人々に対するCOVID-19流行の影響を臨床疫学的に解析した。2021年3月31日以前に入院した患者を後方視的に解析し、28,093人の日本人と1,335人の人種的・民族的マイノリティを対象とした。日本人は高齢で重症化する傾向にあり、医療機関での曝露機会が多かった。一方で人種的・民族的マイノリティは密集した生活習慣や、飲食店等の職業においてCOVID-19の曝露リスクがより高い可能性があるが、基本的背景情報やCOVID-19重症化リスク因子で調整後の比較では入院時、入院後の支持療法や合併症、転帰に差はなかった。

Nomoto H, Asai Y, Hayakawa K, Matsunaga N, Kutsuna S, Kodama EN, Ohmagari N.
Impact of the COVID-19 pandemic on racial and ethnic minorities in Japan.
Epidemiol Infect.
https://doi.org/10.1017/s0950268822001674

妊婦COVID-19入院患者のデルタ株流行期とオミクロン株流行期における臨床的特徴の比較

2021年8月~2021年12月をデルタ株流行期、2022年1月~2022年3月をオミクロン株流行期として、妊婦の新型コロナ感染症入院患者を対象に検討を行った。オミクロン株流行期の妊婦新型コロナ入院患者(199名)の臨床症状は、デルタ株流行期(111名)と比較して鼻汁、咽頭痛が多く、倦怠感、嗅覚・味覚障害が少ないという結果であった。入院時に呼吸数が24回/分以上または酸素飽和度(SpO2)が94%以下、酸素投与/人工呼吸管理/ECMO/集中治療室の入院のいずれかを満たした場合を中等症-重症、そのいずれも満たさない場合を軽症と定義した場合、中等症-重症の患者ではデルタ期の患者、妊娠中期以降の患者、ワクチン2回接種が未完了の患者が多かったことが分かった。

Shoji K, Tsuzuki S, Akiyama T, Matsunaga N, Asai Y, Suzuki S, Iwamoto N, Funaki T, Yamada M, Ozawa N, Yamaguchi K, Miyairi I, Ohmagari N.
Comparison of clinical characteristics of COVID-19 in pregnant women between the Delta and Omicron variants of concern predominant periods.
J Infect Chemother.
https://doi.org/10.1016/j.jiac.2022.09.005

小児COVID-19入院患者のオミクロン株流行期における臨床的特徴

2021年8月1日~2022年3月31日に入院した小児COVID-19患者を対象に、デルタ株流行期(2021年8月1日~12月31日)とオミクロン株流行期(2022年1月1日~3月31日)の臨床的特徴を比較検討した。対象期間中にデルタ株流行期458例、オミクロン株389例が登録された。オミクロン株流行期には2歳から13歳未満で38.0℃以上の発熱が、13歳以上で咽頭痛が、2歳から13歳未満の患者で痙攣が多く認められ、6歳以上の患者で味覚障害や嗅覚障害が少なくなっていた。非侵襲的酸素投与を必要とした患者は,オミクロン株流行期の方が多かったが,集中治療室への入院率に明らかな差はなく、死亡例の登録もなかった。

Shoji K, Akiyama T, Tsuzuki S, Matsunaga N, Asai Y, Suzuki S, Iwamoto N, Funaki T, Ohmagari N.
Clinical characteristics of COVID-19 in hospitalized children during the Omicron variant predominant period.
J Infect Chemother.
https://doi.org/10.1016/j.jiac.2022.08.004

COVID-19における機械学習を用いたHigh Flow Nasal Cannulaのリスク要因の予測モデル

緩やかに進行し、急激に悪化するCOVID-19のハイリスク患者を効率的に把握し、治療介入のタイミングを逃さないことは、患者の予後改善と合併症の予防につながる。そこで、2020年11月14日から2021年4月11日までに日本国内の医療機関に入院しCOVID-19レジストリに登録されている患者を対象とし、High Flow Nasal Cannulaによる侵襲的呼吸管理以上の患者のリスク因子を機械学習を用いて網羅的に探索した。年齢別のコホートを作成し重症度予測を行った。結果、40〜59歳では特異度90%に設定で感度57%、60〜79歳、80歳以上では感度90%に設定し特異度はそれぞれ50%、43%にて重症度を予測できるモデルを得ることができた。LDHは、すべての年齢層で重症度を予測する重要な因子であった。機械学習を用いることで、高い精度で危険因子を特定し、重症度を予測することができた。

Matsunaga N, Kamata K, Asai Y, Tsuzuki S, Sakamoto Y, Ijichi S, Akiyama T, Yu J, Yamada G, Terada M, Suzuki S, Suzuki K, Saito S, Hayakawa K, Ohmagari N.
Predictive model of risk factors of High Flow Nasal Cannula using machine learning in COVID-19.
Infect Dis Model.
https://doi.org/10.1016/j.idm.2022.07.006

COVID-19の重症化リスクを予測するために男女差にもっと注目すべきである:男性の重症化リスクは10歳以上年上の女性と同等

COVID-19に関連する健康政策の優先順位付けは、通常、年齢や他の特定の特徴を考慮して行われるが、男性の重症化リスクが高いにもかかわらず、性別については考慮されていない。本研究の目的は、COVID-19の重症度に対する性と年齢の影響を、男性と女性のリスクが同じになる年齢の差を推定することで比較することである。日本で入院していたCOVID-19患者のデータの大規模レジストリ(COVIREGI-JP)を用い、本研究を実施した。20-89歳の日本人COVID-19入院患者23,414人(男性13,360人、女性10,054人)を対象とした。COVID-19の重症度(0~5)は、入院中に最も重い治療(もしくは死亡)で分類した。重症度 2/3/4/5(非侵襲的人工呼吸/侵襲的人工呼吸/体外式膜式人工肺/死亡)、重症度3/4/5 および重症度5 のリスクを分析した。女性に対する男性の重症度2/3/4/5、3/4/5、および5の年齢と入院時期を調整したオッズ比は、順に2.76、2.78、2.60であった。男性のこれらのリスクは、14.1歳、11.2歳、7.5歳上の女性のリスクと同等だった。4つの先行研究においても、COVID-19の重症化に男女差が大きく影響していた。COVID-19の重症化リスクを予測する要因の一つとして男女差に着目し、公衆衛生政策において考慮すべきである。

Yumi Matsushita, Tetsuji Yokoyama, Kayoko Hayakawa, Nobuaki Matsunaga, Hiroshi Ohtsu, Sho Saito, Mari Terada, Setsuko Suzuki, Shinichiro Morioka, Satoshi Kutsuna, Shinya Tsuzuki, Hisao Hara, Akio Kimura, Norio Ohmagari.
We should pay more attention to sex differences to predict the risk of severe COVID-19: men have the same risk of worse prognosis as women more than 10 years older.
Journal of Epidemiology.
https://doi.org/10.2188/jea.JE20220056

日本におけるCOVID-19の入院患者におけるサイレント・ハイポキシア(SH)の予測因子について

SHの早期発見は治療に重要である。COVID-19入院患者レジストリ(COVIREGI-JP)のうち、入院時低酸素状態(SpO2:70~94%)のある非転院症例で、意識障害、錯乱、認知症のない成人患者を対象とした。SHは、息切れ・呼吸困難がない低酸素状態と定義し990/1904人(52%)が該当した。非SH患者と比し、SH患者はより高齢で、女性が多く、入院時SpO2がやや高く、慢性閉塞性肺疾患(COPD)以外の慢性肺疾患(CLD)、喘息、および肥満がより少なかった。多変量解析の結果、SHの独立した予測因子は、高齢、発症から入院までの短さ、SpO2の高さ、CLDまたはCOPDがないことであった。

Hayakawa K, Morioka S, Asai Y, Tsuzuki S, Yamada G, Suzuki S, Matsunaga N, Ohmagari N.
Predictors of silent hypoxia in hospitalized patients with COVID-19 in Japan.
J Infect Chemother.
https://doi.org/10.1016/j.jiac.2022.06.001

COVID-19の重症度に対する地域差の影響

本研究の主な目的は、日本におけるCOVID-19の重症度に対する地域的不均質性の影響を評価することである。2020年1月から2021年2月までに日本COVID-19登録に登録された27,865例を対象に、COVID-19患者の入院当日のNational Early Warning Score(NEWS)と患者の居住する都道府県の関係を検討した。階層ベイズモデルを用いて患者の背景に加え、各都道府県のランダム効果を検討した。さらに各都道府県のCOVID-19患者用に確保された病床数を固定効果として含むモデルと含まないモデルの2つのモデルの結果を比較した。結果として都道府県は病床数の影響を別に考慮しても、入院時のCOVID-19の重症度に大きな影響を与えることが示された。

Tsuzuki S, Asai Y, Matsunaga N, Ishioka H, Akiyama T, Ohmagari N.
Impact of regional heterogeneity on the severity of COVID-19.
Journal of Infection and Chemotherapy.
https://doi.org/10.1016/j.jiac.2021.12.032

COVID-19 Registry Japan(COVIREGI-JP)におけるデータの代表性の評価

COVIREGI-JPには、全国最大のCOVID-19入院患者が登録されているが、施設の自発的な参加によるため、選択バイアスは避けられない。2022年3月6日までの6回の流行波において、COVIREGI-JPデータを全国データと比較し、その代表性を評価した。COVIREGI-JPの患者数は全国データの1%であり、第1波で高く、第4波以降では低下傾向を示した。COVIREGI-JPの症例致死率は、殆どの地域で全国データより高い傾向があった。刻々と変化するCOVID-19の疫学を考慮すると、COVIREGI-JPでの継続したデータ登録とその活用が望まれるが、選択バイアスは慎重に解釈する必要がある。

Hayakawa K, Asai Y, Matsunaga N, Tsuzuki S, Terada M, Suzuki S, Kitajima K, Saito S, Ohmagari N.
Evaluation of the representativeness of data in the COVID-19 Registry Japan during the first six waves of the epidemic.
Glob Health Med.
https://doi.org/10.35772/ghm.2022.01033

レニン・アンジオテンシン(RA)系抑制薬とCOVID-19重症化の関連性評価

わが国のCOVID-19入院症例のデータベースであるCOVIREGI-JPを用い、2020年1月から10月に登録された6,055名から高血圧、糖尿病、高度腎障害(血清クレアチニン値≧3.0 mg/dL)、脳心血管疾患、慢性閉塞性肺疾患の併存疾患を持った1,921名を抽出した。COVID-19重症化をICU入室、人工呼吸器管理、ECMO導入、院内死亡の複合とし、入院時のRA系抑制薬投与との関連を評価した。COVID-19重症化の独立関連因子は、加齢、男性、慢性閉塞性肺疾患、高度腎障害、糖尿病の併存であったが、RA系抑制薬は関連を認めなかった。

Yoshihara F, Ohtsu H, Nakai M, Tsuzuki S, Hayakawa K, Terada M, Matsunaga N, Yasuda S, Ogawa H, Ohmagari N.
Renin-angiotensin system blocker and the COVID-19 aggravation in patients with hypertension, diabetes, renal failure, Cerebro-cardiovascular disease, or pulmonary disease: Report by the COVID-19 Registry Japan.
J Cardiol.
https://doi.org/10.1016/j.jjcc.2022.04.001

日本のCOVID-19早期非重症患者におけるファビピラビルの効果:COVIREGI-JPによる大規模観察研究

ファビピラビルのCOVID-19に対する効果については複数のランダム化試験で検証されているが、軽症・早期の患者に対する検証は不十分であった。レジストリのデータを用いて、3ステップ法という手法で交絡因子を調節した上で後ろ向きに比較したところ、入院中の酸素投与(投与群のハザード比0.825、95%信頼区間0.657-1.04)・侵襲的機械換気または体外式膜型人口肺の導入(ハザード比1.02、信頼区間0.649-1.60)、30日以内の死亡(ハザード比0.869、信頼区間0.519-1.46)、いずれもファビピラビル投与群と非投与群で有意な差は見られなかった。ファビピラビルはCOVID-19治療において必須の薬剤ではないことが示唆された。

Tsuzuki S, Hayakawa K, Doi Y, Shinozaki T, Uemura Y, Matsunaga N, Terada M, Suzuki S, Asai Y, Yamada G, Saito S, Shibata T, Kondo M, Izumi K, Hojo M, Mizoue T, Yokota K, Nakamura-Uchiyama F, Saito F, Sugiura W, Ohmagari N.
Effectiveness of Favipiravir on Nonsevere, Early-Stage COVID-19 in Japan: A Large Observational Study Using the COVID-19 Registry Japan.
Infect Dis Ther.
https://doi.org/10.1007/s40121-022-00617-9

ワクチン接種が普及する以前の日本におけるCOVID-19入院患者の第1~3波の臨床的特徴

COVID-19 REGISTRY JAPANのデータを用い553の医療施設からのCOVID-19入院患者33,554人を対象とした検討を行った。年齢層(0〜17歳 [3%]、18〜39歳 [22%]、40〜64歳 [34%]、65歳以上 [41%])および流行波(第1波 [16%]、第2波 [35%]、第3波 [49%])別に分析した。年齢中央値・併存疾患の頻度は、第2波で最も低く第3波で最も高かった。全体の致死率は5%であり、年齢層別では65歳以上で11.4%と最も高く、流行波別では第1波(7.3%)で最も高く、第2波(2.8%)で最も低かった。年齢と併存疾患を調整した後、死亡リスクは第1波で最も高かった。

Matsunaga N, Hayakawa K, Asai Y, Tsuzuki S, Terada M, Suzuki S, Ohtsu H, Kitajima K, Toyoda A, Suzuki K, Suzuki M, Saito S, Uemura Y, Shibata T, Kondo M, Nakamura-Uchiyama F, Yokota K, Saito F, Izumi K, Sugiura W, Ohmagari N.
Clinical characteristics of the first three waves of hospitalised patients with COVID-19 in Japan prior to the widespread use of vaccination: a nationwide observational study.
Lancet Reg Health West Pac.
https://doi.org/10.1016/j.lanwpc.2022.100421

日本の三次病院でのCOVID-19入院患者における他の病原体検出の評価

2020年1月-9月までNCGMに入院したCOVID-19患者247名の入院時の他病原体検出状況について観察研究を実施した。インフルエンザを始めとする迅速検査は施行数も限られていたが、すべて陰性の結果であった。また、フィルムアレイ呼吸器感染症パネルは18例に施行されたがすべて陰性であった。細菌の共検出は患者全体の約6%と低く、諸外国の先行研究における、COVID-19入院患者での共検出頻度は低いとの報告と一致する結果であった。しかし、本研究でのサンプル数は限られており、共感染と共検出の区別、病原体の同定方法などの違いから、他研究との結果の比較には慎重な検討が必要である。

Suzuki M, Hayakawa K, Asai Y, Matsunaga N, Terada M, Ohtsu H, Toyoda A, Takasaki J, Hojo M, Yanagawa Y, Saito S, Yamamoto K, Ide S, Akiyama Y, Suzuki T, Moriya A, Mezaki K, Ohmagari N.
Evaluation of the detection of other pathogens in hospitalized patients with COVID-19 at a tertiary hospital in Japan.
Jpn J Infect Dis.
https://doi.org/10.7883/yoken.JJID.2021.232

日本のCOVID-19軽症入院患者におけるレムデシビルの効果:COVIREGI-JPによる大規模観察研究

レムデシビルのCOVID-19に対する効果については複数のランダム化試験で検証されているが、軽症・早期の患者に対する検証は不十分であった。レジストリのデータを用いて、3ステップ法という手法で交絡因子を調節した上で後ろ向きに比較したところ、入院中に酸素投与に至るハザード比はレムデシビル投与群で有意に低かった(ハザード比0.850、95%信頼区間0.798-0.906、p値<0.001)。侵襲的機械換気または体外式膜型人口肺の導入、30日以内の死亡については投与群と非投与群で有意な差は見られなかった(ハザード比それぞれ0.983、1.04、95%信頼区間それぞれ0.906-1.07、0.980-1.09)。軽症・早期のCOVID-19患者に対し、レムデシビルは入院中の酸素需要のリスクを軽減することが示唆された。

Tsuzuki S, Hayakawa K, Uemura Y, Shinozaki T, Matsunaga N, Terada M, Suzuki S, Asai Y, Kitajima K, Saito S, Yamada G, Shibata T, Kondo M, Izumi K, Hojo M, Mizoue T, Yokota K, Nakamura-Uchiyama F, Saito F, Sugiura W, Ohmagari N.
Effectiveness of remdesivir in hospitalized nonsevere patients with COVID-19 in Japan: A large observational study using the COVID-19 Registry Japan.
Int J Infect Dis.
https://doi.org/10.1016/j.ijid.2022.02.039

COVID-19患者における無症候性低酸素血症のリスクファクターを調査する後方視的研究

COVIREGI-JPのデータを用いて、COVID-19患者における無症候性低酸素血症のリスクファクターを検証した。2020年1月1日から2021年3月31日までにCOVIREGI-JPに登録された者の中で入院時に呼吸困難感の訴えがなかった者を抽出し、入院時の経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)が93%以下の群を無症候性低酸素血症群、94%以上の群をコントロール群に分類した。20歳未満の者、入院時に酸素吸入を行っていた者、意識障害を認めた者を除外した。無症候性低酸素血症のリスクファクターを調査するため、多変量ロジスティック回帰分析を実施した。その結果、65歳以上、男性、BMI25kg/m2以上、喫煙、COPDを含む慢性肺疾患、糖尿病がCOVID-19患者における無症候性低酸素血症と関連する因子であることが判明した。

Akiyama Y, Morioka S, Asai Y, Sato L, Suzuki S, Saito S, Matsunaga N, Hayakawa K, Ohmagari N.
Risk factors associated with asymptomatic hypoxemia among COVID-19 patients: a retrospective study using the nationwide Japanese registry, COVIREGI-JP.
J Infect Public Health.
https://doi.org/10.1016/j.jiph.2022.01.014

日本のCOVID-19レジストリに登録された2020年の入院患者における循環器合併症

2020年末時点で19,853名の入院患者のデータを含むCOVID-19 Registry Japanを解析した。心血管合併症の発生率は、心筋炎・心膜炎・心筋症0.098%、心室頻拍・細動0.48%、心筋虚血0.17%、心内膜炎0.062%、深部静脈血栓症0.59%、肺塞栓症0.19%、脳硬塞・出 血0.37%であった。心内膜炎を除くすべての合併症は,院内死亡率の上昇と関連していた。COVID-19の心血管系合併症は、日本では頻度が低いものの、予後不良である。

Hiroi Y, Ohtsu H, Uemura Y, Hayakawa K, Asai Y, Kutsuna S, Terada M, Sugiura W, Ohmagari N.
Cardiovascular Complications of Hospitalized Patients With Coronavirus Disease 2019 in a Japanese Registry in 2020.
Circ J.
https://doi.org/10.1253/circj.CJ-21-0687

小児COVID-19入院例の臨床的特徴についてのデルタ株流行前後での比較:COVID-19 Registry Japanからの報告

2020年10月~2021年5月までをデルタ株以前、2021年8月~10月までをデルタ株流行期とし、それぞれの期間に登録された18歳未満の小児新型コロナウイルス感染症入院例1,299人(デルタ株以前:950人、デルタ株流行期:349人)を対象に実施した。デルタ株流行期は、デルタ株以前に比べて患者年齢が低いこと(中央値 7歳 vs 10歳)、基礎疾患のある患者の割合が高いこと(12.6% vs 7.4%)、集中治療室(ICU)入院を要した患者が多いこと(1.4% vs 0.1%)などが明らかとなった。これらの分析結果は、小児の新型コロナウイルス感染症患者の絶対数が増えると集中治療を要する患者も増えることを示唆しており、オミクロン株が爆発的に流行している現在において、また今後日本の小児に対する新型コロナウイルス感染症対応を考える上で貴重な情報といえる。

Shoji K, Akiyama T, Tsuzuki S, Matsunaga N, Asai Y, Suzuki S, Iwamoto N, Funaki T, Ohmagari N.
Comparison of the clinical characteristics and outcomes of COVID-19 in children before and after the emergence of Delta variant of concern in Japan.
J Infect Chemother.
https://doi.org/10.1016/j.jiac.2022.01.009

妊婦の新型コロナウイルス感染症の臨床的特徴:COVID-19 Registry Japanのデータを用いた検討

COVID-19 Registry Japanに登録された15-44才の女性患者を対象とし、妊娠の有無、症状、治療内容、予後等の情報を抽出した。死亡、人工呼吸管理、集中治療室入室のいずれかを満たす場合を重症の、それらに酸素投与や入院時の酸素飽和度≦94%などを加えたものを中等症以上の複合評価項目とし、傾向スコア解析を用いて妊婦、非妊婦の患者背景をマッチングし比較した。また妊婦COVID-19患者を対象とした多変量解析で中等症以上と関連する因子について検討した。研究期間中に登録された254名の妊婦と3752名の非妊婦のうち、傾向スコア解析で187名の妊婦と935名の非妊婦が選択された。重症の複合評価項目を満たす患者は妊婦群1名(0.1%)、非妊婦群4名(0.4%)、p=1.0と明らかな差を認めなかったが、中等症以上は妊婦群18名(9.6%)、非妊婦群46名(4.9%)、p=0.0155と妊婦群に有意に多かった。妊婦254名を対象とした多変量解析では、基礎疾患があること(オッズ比5.295 [1.210-23.069] )、妊娠第2期以降(オッズ比3.871 [1.201-12.477])が中等症以上と関連する有意な因子であった。妊婦COVID-19は非妊婦と比べ中等症以上となりやすく、妊婦COVID-19では妊娠第2期以降が重症化因子である可能性がある。

Shoji K, Tsuzuki S, Akiyama T, Matsunaga N, Asai Y, Suzuki S, Iwamoto N, Funaki T, Yamada M, Ozawa N, Yamaguchi K, Miyairi I, Ohmagari N.
Clinical characteristics and outcomes of COVID-19 in pregnant women: a propensity score matched analysis of the data from the COVID-19 Registry Japan.
Clin Infect Dis.
https://doi.org/10.1093/cid/ciac028

日本における高齢者COVID-19入院患者の臨床疫学および重症化因子の解析

高齢はCOVID-19の独立した重症化リスク因子(RF)である。我々は日本における高齢者COVID-19コホートの年齢を層別化し、高齢COVID-19入院患者の臨床疫学的特徴と各年齢層におけるRFを分析した。2020年10月31日までのCOVID-19入院患者の全国レジストリを用いた後方視的コホート研究を行った。ケースは年齢別にpre-old(65~74歳)、old(75~89歳)、super-old(90歳以上)に分類し、各年齢層のRFに関する多変量ロジスティック回帰分析(MLR)を行った。444病院の4,701人の患者のうち、79.3%が少なくとも1つの併存疾患を有していた。高血圧はすべての年齢層で罹患割合が高く、認知症、心血管疾患、脳血管疾患の患者の割合は年齢とともに増加した。人工呼吸器/体外式膜型人工心肺装置の管理を受けた患者の割合は超高齢者で低い傾向がみられた。全体の死亡率は11.5%であり、各年齢層では高齢前:5.3%、高齢者:15.2%、超高齢者:22.4%だった。MLRではRFが各年齢層で異なることが示された。男性はすべての年齢で有意なRFであった。膠原病、中等度から重度の腎障害、透析はより高齢で有意なRFであり、血液悪性腫瘍や転移性腫瘍は若年層のRFとして重要であった。重症化に関連するRFの多くが入院中の死亡と関連していた。

Asai Y, Nomoto H, Hayakawa K, Matsunaga N, Tsuzuki S, Terada M, Ohtsu H, Kitajima K, Suzuki K, Suzuki T, Nakamura K, Morioka S, Saito S, Saito F, Ohmagari N.
Comorbidities as Risk Factors for Severe Disease in Hospitalized Elderly COVID-19 Patients by Different Age-Groups in Japan.
Gerontology.
https://doi.org/10.1159/000521000

高齢(80歳以上)COVID-19患者におけるレムデシビルの安全性

高齢COVID-19患者はレムデシビルによる治療を要するような増悪リスクが高いが、高齢者におけるレムデシビルの安全性は不明である。そこで我々は2020年7月から2021年5月までに当院に入院し、レムデシビルを投与されたCOVID-19患者を後方視的に分析した。対象は80人で、そのうち26人が80歳以上の高齢者であった。有害事象によるレムデシビルの中断は高齢者で1人(3.9%)、若年者で4人(7.4%) [p>0.99]であった。高齢者におけるレムデシビルによる全有害事象、肝機能障害、腎機能障害、消耗の発生率は若年者と有意差を認めなかった。高齢COVID-19患者におけるレムデシビルの安全性は若年者と遜色なかった。このため高齢者に対してもレムデシビルの投与を推奨しうる。

Kanai O, Fujita K, Nanba K, Esaka N, Hata H, Seta K, Yasoda A, Odagaki T, Mio T.
Safety of Remdesivir for Patients 80 Years of Age or Older with Coronavirus Disease 2019 (COVID-19).
Drugs Aging.
https://doi.org/10.1007/s40266-021-00908-9

喫煙状況と新型コロナウイルス感染による重症化リスクについて

COVID-19の罹患、重症化、および死亡の原因を分析した多くの研究がさまざまな国から発表されている。しかし、生活習慣とCOVID-19との関連をみた研究はあまり行われておらず、喫煙のCOVID-19の影響に関して一貫した結果はまだ得られていない。そこで、喫煙状態がCOVID-19の重症度に及ぼす影響を調べるために、日本で入院していたCOVID-19患者のデータの大規模レジストリ(COVIREGI-JP)を用い、本研究を実施した。 20~89歳のCOVID-19入院患者17,666人(男性10,250人、女性7,416人)を対象とした。COVID-19の重症度(0~5)を、入院中に行った最も重い治療(もしくは死亡)で分類した。重症度3/4/5(侵襲的人工呼吸/体外式膜酸素投与/死亡)と、重症度5(死亡)の喫煙状況を、多重ロジスティック回帰を用いて重症度0(酸素投与なし;基準群)と比較した。喫煙状況は、非喫煙者、過去喫煙者、現在喫煙者、不明を4つのグループに分け、性別、年齢、入院時期、併存疾患で調整したオッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)を求めた。 男性の過去喫煙者では、重症度3/4/5および重症度5(重症度0を基準とした場合)のCOVID-19重症化リスクは有意に増加していた(年齢、入院時期を調整したOR(95%CI)=1.51(1.18-1.93)、1.65(1.22-2.24))。併存疾患で調整すると、ORは弱くなった。女性についても同様の傾向がみられた。現在喫煙者では、男女ともに重症度 3/4/5、重症度 5の有意なリスク増加はみられなかった。 COVID-19の重症度は、喫煙そのものよりも、喫煙によって引き起こされる併存疾患と関連していた。したがって、禁煙は喫煙関連疾患を予防するための重要な要素であり、COVID-19の重症化リスクを低減するための重要な要素であると考えられる。

Matsushita Y, Yokoyama T, Hayakawa K, Matsunaga N, Ohtsu H, Saito S, Terada M, Suzuki S, Morioka S, Kutsuna S, Mizoue T, Hara H, Kimura A, Ohmagari N.
Smoking and severe illness in hospitalized COVID-19 patients in Japan.
Int J Epidemiol.
https://doi.org/10.1093/ije/dyab254

人工呼吸管理を行なった COVID-19 患者の年齢と予後:COVID-19 REGISTRY JAPAN 研究より

COIVD-19 REGISTRY JAPAN に登録された患者のうち、人工呼吸管理を行なった重症患者に関して年代と死亡率の関係を評価した。年齢、性別、BMI30以上、喫煙歴、基礎疾患、入院日、入院時バイタル、ARDSの有無、ステロイドの使用、COVID-19の治療薬の投与の有無など死亡に関わる因子を含めて多変量解析を行なったところ、59才以下と比べて60代は2.6倍、70代は6.9倍、80代は13.2倍、90代は92.6倍死亡率が高くなるという結果であった。この結果から、人工呼吸管理を必要とするCOVID-19重症患者について、高齢は極めて重大な死亡に関する危険因子であり、高齢者の重症化を予防は公衆衛生上重要な課題と考えられた。

Tanaka et al.
Association between mortality and age among mechanically ventilated COVID-19 patients: a Japanese nationwide COVID-19 database study
Annals of Intensive Care.
https://doi.org/10.1186/s13613-021-00959-6

京都市におけるCOVID-19パンデミック第1波から第3波下の医療介護負担増加の状況

COVID-19 pandemicは、医療体制、経済活動に大きな負荷を与えている。日本のような高齢化社会におけるCOVID-19 pandemicの現状評価を行った。2020年4月1日から2021年3月31日に入院したCOVID-19患者をレビューし、背景因子、日常生活動作(ADL)の程度、高齢者特有の合併症などを評価した。118名を登録した。約40%は80歳以上であった。基礎疾患は、認知症(27.1%)が最も多かった。約60%の患者にADL低下を認め、80歳以上の患者は、有意に入院期間が長かった(P=0.032)。80歳以上の患者では、約50%が認知障害を有し、約70%が寝たきり状態や摂食障害を有していた。入院時のADL低下は、COVID-19死亡率と有意に関連していた(P=0.044)。高齢化社会では医療従事者は医療に加え看護の追加負担を強いられることを念頭に置くべきである。

Fujita K, Kashihara E, Kanai O, Hata H, Yasoda A, Odagaki T, Mio T.
Increasing burden of nursing care on the treatment of COVID-19 patients in the ageing society: analyses during the first to the third wave of pandemic in Kyoto City, Japan.
Frontiers in Medicine.
https://doi.org/10.3389/fmed.2021.767110

日本における免疫抑制状態のCOVID-19入院患者の臨床的特徴と予後

COVID-19を発症した免疫抑制状態にある入院患者の臨床的特徴と予後を解析する観察研究を行なった。14,760人の症例のうち、887人(5.9%)が免疫抑制状態であり、固形腫瘍(43.3%、n=384)、3カ月以内の化学療法(15.6%、n=138)、膠原病(16.9%、n=150)、免疫抑制剤の使用(16.0%、n=142)、転移性固形腫瘍(13.5%、n=120)等が多かった。免疫抑制状態の方は高齢で重症度が高く、主な背景疾患ごとのCOVID−19の死亡率は以下の通りであった:固形腫瘍 12.5% (48/384, P < 0.001, 相対リスク[RR], 3.41)、転移性固形腫瘍:31.7% (38/120, P < 0.001, RR, 8.43)、白血病23.1% (9/39, P < 0.001, RR, 5.87)、リンパ腫33.3% (20/60,P < 0.001, RR, 8.63)、膠原病15.4% (23/150, P < 0.001, RR 3.97)。しかし死亡率の高い背景疾患で必ずしも侵襲的支持療法の割合が高いとは限らなかった。免疫抑制状態にあるCOVID-19入院患者の予後は背景疾患によって異なり、複数の要因が侵襲的支持療法の適応に影響していた可能性がある。

Nomoto H, Suzuki S, Asai Y, Hayakawa K, Gatanaga H, Terada M, Suzuki K, Ohtsu H, Toyoda A, Ohmagari N.
Clinical characteristics and prognosis of immunosuppressed inpatients with COVID-19 in Japan.
J Infect Chemother.
https://doi.org/10.1016/j.jiac.2021.10.021

入院時のCTで見られる脂肪肝は重症COVID-19のリスク因子である

臨床現場では、COVID-19の重症化リスク因子として既知の因子以外に、より簡便に重症化を予測できる因子が求められている。我々は、入院時のCT検査で容易に診断できる脂肪肝がその1つであると仮定し、2020年1月~8月までに当院に入院した222人の症例を後方視的に解析した。重症COVID-19例と非重症例を比較した単変量解析ではBMI、年齢、高血圧、脂肪肝の有無に有意差が見られたが、多変量解析では年齢と脂肪肝の有無のみに有意差が見られ、脂肪肝の存在はオッズ比6.20 (2.82 – 13.62)であった。 この結果より、CTで見られる脂肪肝は重症COVID-19のリスク因子である可能性が示唆された。

Okuhama A, Hotta M, Ishikane M, Kawashima A, Miyazato Y, Terada M, Yamada G, Kanda K, Inada M, Sato L, Sato M, Akiyama Y, Suzuki T, Nakamoto T, Nomoto H, Ide S, Nakamura K, Saito S, Kinoshita N, Yamamoto K, Morioka S, Ujiie M, Hayakawa K, Kustuna S, Shida Y, Tajima T, Teruya K, Funato Y, Yamamoto M, Izumi S, Hojo M, Sugiyama H, Ohmagari N.
Fatty liver on computed tomography scan on admission is a risk factor for severe coronavirus disease.
J Infect Chemother.
https://doi.org/10.1016/j.jiac.2021.10.013

COVID-19入院患者の全国コホート(COVIREGI-JP)における抗凝固療法の死亡率低下効果の評価

日本でのCOVID-19入院患者に対する抗凝固療法が転帰を改善するか、COVIREGI-JPのデータを用いて評価を行った。またベースラインの交絡因子を調整するためにIPTW(inverse probability of treatment weight)法を用いた。対象となった1748例のうち、367例(治療群)に抗凝固薬が使用された。29日後の死亡率はコホート全体で7.6%(治療群11.2%、無治療群6.6%)、ステロイド治療を受けていない患者では6%(治療群12.3%、無治療群5.2%)、ステロイド治療を受けた患者では11.2%(治療群10.5%、無治療群11.8%)であった。治療群と無治療群の死亡率は同等であり(p=0.99)、ステロイド治療と併用した群では死亡率の低下傾向が認められた(p=0.075)。 合併症や血栓症のリスクが欧米とは異なるアジア人であっても、抗凝固薬が有益であることを示唆しており、抗凝固療法を推進する根拠となるものである。

Hara H, Uemura Y, Hayakawa K, Togano T, Asai Y, Matsunaga N, Terada M, Ohtsu H, Kitajima K, Shimizu Y, Sato L, Ishikane M, Kinoshita-Iwamoto N, Shibata T, Kondo M, Izumi K, Sugiura W, Ohmagari N.
Evaluation of the efficacy of anticoagulation therapy in reducing mortality in a nationwide cohort of hospitalized patients with coronavirus disease in Japan.
Int J Infect Dis.
https://doi.org/10.1016/j.ijid.2021.09.014

小児COVID-19入院患者の臨床的特徴:COVID-19 Registry Japanより

小児のCOVID-19は軽症が多いことで知られているが、日本の小児でどのような症状が見られ、どの程度の期間入院していたかなどの情報は限られていたためこれを調査した。2020年1月~2021年2月の間にCOVID-19 Registry Japanに登録された18歳未満のCOVID-19患者を対象とした。期間中に36,460人の患者が登録され、18歳未満の患者は1,038名であった。入院時に無症状の患者は308名(29.7%)であり、隔離目的や保護者の不在等、社会的理由での入院が示唆された。有症状患者730名のうち、酸素投与を要した患者は15名(2.1%)、死亡した患者は0名であり、小児COVID-19患者は軽症であったと言える。入院期間の中央値は8日で症状の有無では変わらず、無症状の患者も長期入院していたことが明らかになった。

Kensuke Shoji, Takayuki Akiyama, Shinya Tsuzuki, Nobuaki Matsunaga, Yusuke Asai, Setsuko Suzuki, Noriko Iwamoto, Takanori Funaki, Norio Ohmagari
Clinical Characteristics of Hospitalized COVID-19 in Children: Report From the COVID-19 Registry in Japan.
J Pediatric Infect Dis Soc.
https://doi.org/10.1093/jpids/piab085

日本人のCOVID-19患者の呼吸不全を予測するシンプルな予測スコアリングの作成と性能評価 [参考資料:PDF]

医療が逼迫している状況では、呼吸不全を呈する可能性のあるハイリスク患者を適切に医療機関へつなげることが、医療崩壊防止のために極めて重要である。本研究では、COVID-19の全国レジストリ(COVIREGI-JP)の6873人のデータを用いて、既往歴と症状のみから患者が将来的に呼吸不全を来すかどうかを予測するシンプルなリスクスコアリングを作成した。年齢層ごとの異質性を考慮し、若年モデル、中年モデル、高齢モデルを別々に作成し、9月10日を境に入院日で分類した導出コホートと検証コホートで性能を評価した。モデルの判別能と校正は良好で、今回開発したリスクスコアリングは、流行期での医療資源の有効活用に応用されることが期待できる。

Yamada G, Hayakawa K, Matsunaga N, Terada M, Suzuki S, Asai Y, Ohtsu H, Toyoda A, Kitajima K, Tsuzuki S, Saito, Ohmagari N.
Predicting respiratory failure for COVID-19 patients in Japan: a simple clinical score for evaluating the need for hospitalization.
Epidemiology and Infection.
https://doi.org/10.1017/S0950268821001837

日本のCOVID-19入院患者における入院前の抗血小板療法および抗凝固療法の重症度への影響について

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、凝固異常や肺血栓症を引き起こし、予後を悪くする一因となることが多くの論文で報告されている。本研究では、入院前の抗凝固療法や抗血小板療法がCOVID-19の重症化を防ぐかどうかを評価することを目的とした。 2020年2月9日~7月31日に日本で入院したCOVID-19患者を解析した。 日本の342施設の合計4265名の患者を対象とした。基礎疾患をコントロールした傾向スコアマッチング解析では、抗凝固療法や抗血小板薬は入院時の重症度(抗凝固薬:オッズ比0.89 [95%信頼区間: 0.56-1.43], P=0.63; 抗血小板薬:0.86 [0.62-1.2], P=0.375)・D-ダイマー上昇(抗凝固薬:0.75 [0.39-1.43], P=0.379; 抗血小板薬:0.83 [0.51-1.33])のわずかな低下と関連していた。しかし、この差は統計学的には有意ではなかった。この結果を踏まえ、基礎疾患に対してこれらの薬剤を服用している場合、COVID-19流行下でもその継続が望ましいと考えられた。

Togano T, Uemura Y, Asai Y, Hayakawa K, Matsunaga N, Terada M, Ohtsu H, Suzuki S, Toyoda A, Hara H, Sato R, Ishikane M, Kinoshita-Iwamoto N, Hangaishi A, Ohmagari N.
The influence of pre-admission antiplatelet and anticoagulation therapy on the illness severity in hospitalized patients with COVID-19 in Japan.
J Infect Chemother.
https://doi.org/10.1016/j.jiac.2021.07.016

“silent hypoxia”を呈するCOVID-19症例の臨床的・放射線画像の特徴

COVID-19患者の一部にみられる臨床上の特徴として、“silent hypoxia”と呼ばれる、低酸素血症があるにも関わらず呼吸困難を認めない、という現象がある。本研究では、当院に2020年1月~8月に入院した270人のうち“silent hypoxia”を呈した8人の臨床的・放射線画像の特徴を記述した。年齢の中央値は61歳、5人 (62.5%) が男性であった。CTでは全例浸潤影を認め、必要とした最大FIO2の中央値は55%であった。2人(25.0%)が挿管を、1人(12.5%)は 体外式膜型人工肺(ECMO)を必要とした。“silent hypoxia”を呈する患者は予後が悪い可能性が示唆された。

Okuhama A, Ishikane M, Hotta M, Sato L, Akiyama Y, Morioka S, Suzuki S, Tajima T, Yamamoto M, Teruya K, Izumi S, Ohmagari N.
Clinical and radiological findings of silent hypoxia among COVID-19 patients.
J Infect Chemother.
https://doi.org/10.1016/j.jiac.2021.07.002

本邦におけるCOVID-19患者に関する入院時の重症度および入院中の経過に関するリスク因子の検討

COVID-19レジストリ研究(COVIREGI-JP)のデータを利用し、入院時の重症度、入院中の最悪重症度、死亡率などに関するリスク因子について解析を行った。2020/1/16~2020/3/31の期間に入院した3829例のうち3376例を本研究の解析対象とした。入院時に重症であることのリスク因子は年齢、男性、心血管疾患、慢性呼吸器疾患、糖尿病、肥満、高血圧だった。脳血管疾患、肝疾患、腎疾患・透析、固形癌、高脂血症は入院中の重症度とは相関が認められたが、入院時の重症度とは相関しなかった。これらの因子のうち、高血圧と高脂血症は死亡率との相関が比較的小さかった。入院時の重症度、入院中の最悪重症度、死亡率に影響するリスク因子は一貫しておらず、それぞれ異なる因子に影響されることが示唆された。中でも、高血圧、高脂血症、肥満は重症度に影響はするものの、死亡に対する影響は小さい可能性があった。

Terada M, Ohtsu H, Saito S, Hayakawa K, Tsuzuki S, Asai Y, Matsunaga N, Kutsuna S, Sugiura W, Ohmagari N.
Risk factors for severity on admission and the disease progression during hospitalisation in a large cohort of patients with COVID-19 in Japan.
BMJ Open.
https://doi.org/10.1136/bmjopen-2020-047007

COVID-19レジストリデータを用いた新型コロナウイルス感染症における年齢別症例致命割合について

COVID-19レジストリデータを用いた新型コロナウイルス感染症における年齢別症例致命割合について報告した。2020年9月30日までに入院した患者1万2,599人を対象とし、そのうち60歳以上が37.6%を占めていた。症例致命割合は、全体で4.2%(60歳未満は0.3%、60歳以上は10.7%)と、60歳未満では死亡例はほとんど認められなかった。しかし、基礎疾患のある人の致命割合は、60歳未満は1.0%、60~64歳4.4%、65~69歳7.2%、70~74歳7.5%、75~79歳12.8%、80歳以上20.5%と、基礎疾患のない患者に比べ高く、年齢が高くなるにつれて上昇することが判明した。基礎疾患がない人の致命割合についても、60歳未満では0.1%と低いが、70~74歳で3.7%、80歳以上で12.8%と、年齢が高くなるにつれて上昇する結果を報告した。

COVID-19レジストリ研究 運営事務局・運営委員会.
IASR. Vol.42 p19-20: 2021年1月号.
https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ka/corona-virus/2019-ncov/2488-idsc/iasr-news/10080-491p03.html

日本国内におけるCOVID-19第一波と第二波の比較

COVID-19 Registry Japanのデータを用いて、日本国内におけるCOVID-19の流行状況を第一波(2020年1月26日~5月31日)、第二波(6月1日~7月31日)として比較した。第一波においては入院時に重症であった症例が多く、発症から入院までの日数が長い傾向にあった。第二波においては若年者の割合が高く、基礎疾患を有する割合が低かった。さらにすべての年齢層において死亡率が低い傾向にあった。これらの結果から第一波においては医療体制がよりひっ迫した状態であったことが示唆された。

Saito S, Asai Y, Matsunaga N, Hayakawa K, Terada M, Ohtsu H, Tsuzuki S, Ohmagari N.
First and second COVID-19 waves in Japan: A comparison of disease severity and characteristics.
J Infect.
https://doi.org/10.1016/j.jinf.2020.10.033

本邦におけるCOVID-19入院患者の臨床疫学的特徴:COVID-19 REGISTRY JAPAN初報

COVID-19 REGISTRY JAPAN(COVI-REGI)は、国立国際医療研究センターが中心となって立ち上げたCOVID-19の症例データベースである。227の医療施設から登録された2638例を検討の対象とした。年齢中央値は56歳(四分位範囲[IQR]:40~71歳)で、症例の半数以上が男性であった。症例の60%近くがCOVID-19確定例または疑い例と濃厚接触歴があった。併存疾患は高血圧(15%)と合併症を伴わない糖尿病(14.2%)が最も多かった。入院中経過は、酸素非投与患者(61.6%)が最多で、次いで酸素投与患者(29.9%)、侵襲的機械的換気またはECMOを使用した患者(8.5%)であった。66.9%の患者が自宅退院し、7.5%が入院中に死亡した。欧米諸国の報告と比し、併存疾患が少なく、死亡率が低い傾向にあることがわかった。

Matsunaga N, Hayakawa K, Terada M, Ohtsu H, Asai Y, Tsuzuki S, Suzuki S, Toyoda A, Suzuki K, Endo M, Fujii N, Suzuki M, Saito Sho, Uemura Y, Shibata T, Kondo M, Izumi K, Terada-Hirashima J, Mikami A, Sugiura W, Ohmagari N.
Clinical epidemiology of hospitalized patients with COVID-19 in Japan: Report of the COVID-19 REGISTRY JAPAN.
Clin Infect Dis.
https://doi.org/10.1093/cid/ciaa1470

○ その他